古いブルックスブラザーズの「Slim Fit」を気に入って、同じ名前のシャツを買い足す。ところが、思っていた形と違う。そうした行き違いを考える手がかりになるのが、フィット名の変遷です。
当店のInstagramでも、シャツのフィット名を図にまとめました。ここではその見方を一歩進めて、当時の案内と現在確認できる公式情報を比べます。名前のつながりを知ることと、同じ寸法だと判断することは、分けて考える必要があります。参考:当店のフィット名解説
2015年頃、形を表す言葉から固有の名前へ
2015年4月6日付のPut This Onには、ブルックスがシャツの名称を変更したという記事と、当時の案内画像が残っています。画像では、MilanoにExtra Slim、RegentにSlim、MadisonにRegular、TraditionalにRelaxedが併記されています。出典:Put This On・2015年当時の名称変更案内
つまり、この時期の対応を読むなら、Extra SlimはMilano、SlimはRegent、RegularはMadisonです。今の感覚で「SlimならMilano」「RegularならRegent」と古いタグを読み替えると、一段違うフィットを想像してしまいます。
記事の筆者も変更を少し前の出来事として紹介しているため、2015年4月6日を変更日とは扱いません。また、これは当時の案内における対応で、日本を含む全商品が同日に切り替わったことや、寸法が完全に同じだったことまで示すものではありません。
同じ名前が、別の時代には別の位置にある
2026年9月に閲覧できた米国公式の5区分のガイドでは、SohoがExtra Slim、MilanoがSlim、RegentがRegular、MadisonがRelaxed、TraditionalがExtra Relaxedと説明されています。2015年の画像と比べると、同じMilanoでも添えられた説明がExtra SlimからSlimへ変わっています。出典:米国公式・5区分のフィットガイド
さらに米国公式には、Slim Fit・Regular Fit・Traditional Fitの3区分で説明する別のドレスシャツガイドもあります。Slimは胸や身頃が細くアームホールが高い形、Regularは胸・身頃・袖に標準的なゆとりがある形、Traditionalは身頃と袖によりゆとりがある形として案内されています。出典:米国公式・3区分のドレスシャツガイド
公式サイト内でも異なる体系の案内を閲覧できるため、ひとつのページだけを根拠に「この年以降はすべてこの名称」とは決められません。購入する商品の説明と、その商品に対応する寸法表を見ることが大切です。名称の変遷は古着を探す地図になりますが、製造年やサイズを確定する証明書にはならないのです。
同じ首回りでも、胴まわりは違う
ドレスシャツでは、首回りと袖の長さを選んだうえで、身頃の形をフィットで選びます。首が合うシャツでも、お腹や背中に余裕があるとは限りません。反対に、胴まわりを広くするために首回りを上げると、襟元が余ってしまうことがあります。
先ほどの5区分のガイドでは、Sohoは背中にダーツを設けた最も細い区分です。フィット名は細い順の目安にもなりますが、胸とウエストが同じ割合で変わるわけではありません。
胸とウエストの差を見ると、形が見えてくる
同ガイドのセンチ表示では、Regentに対してMilanoは胸が約7cm、ウエストが約4cm小さく、Madisonは胸が約6cm、ウエストが約8cm大きいと示されています。Traditionalは両方が約13cm大きく、Sohoは両方が約13cm小さい区分です。これは公式の比較値で、すべての年代の現物を測った結果ではありません。
注目したいのは、Madisonでは胸よりもウエストの増加幅が大きいことです。単にシャツ全体を拡大するのではなく、胴まわりのゆとりの配分が変わっています。胸は合っているのにお腹でボタンが引っ張られる、といった悩みでは、この違いが選ぶ手がかりになります。
ここでいう胸・ウエストの周囲寸法と、古着店でよく使う平置きの身幅は別です。「胸が6cm大きい」を「身幅が6cm広い」と読み替えないようにしてください。
RegentからRegularへ。名前だけの変更ではない例
日本公式の品番330000373、Regular Fitのドレスシャツには、従来のRegent Fitと寸法が変わった旨が明記されています。この一例だけでも、「Regular=昔のRegentと完全に同じ寸法」とは言い切れないことが分かります。出典:日本公式・品番330000373
同商品の15 1/2サイズの掲載寸法は、首周り41.0cm、バスト114.3cm、ウエスト106.0cm、肩幅47.5cm、着丈76.2cm。表示サイズの15 1/2をインチから換算した約39.4cmと、商品寸法の首周り41.0cmも一致していません。サイズ名、実際の服の寸法、身体の寸法は、それぞれ分けて読む必要があります。
これらは特定商品の新品時の公表値です。手元にある古いRegentとの比較には、その一着の実寸が必要になります。
タグの色より、書かれた名前と寸法を見る
米国の先ほどのガイドでは、MadisonとTraditionalの両方に赤いラベルの案内があります。したがって色だけでも両者は分けられません。タグ全体の文字と、商品カテゴリを一緒に確認することが大切です。
自分の定番を、一枚測っておく
まず着やすいシャツを平らに置き、身幅、ウエスト付近の幅、肩幅、着丈を測ります。袖は肩先からの袖丈なのか、首の後ろからの裄丈なのかも記録します。同じ方法で測った数字なら、フィット名の違う一着とも比べられます。
ネクタイを締めるなら襟元の収まりを、座って過ごす時間が長いなら胴まわりの余裕を、裾を外へ出すなら着丈を重視する。着方が決まると、必要なゆとりも見えてきます。
フィット名は形を探す入口です。その先にある寸法を読むと、ブルックスの豊富な選択肢を、自分の着心地へ結びつけられるようになります。
